国王の死去から一夜明けた14日朝、バンコク中心部を走る鉄道の駅は静まり、多くの人たちが黒と白を基調とした服を身につけていた=乗京真知撮影
タイのプミポン国王の死去から一夜明けた14日、首都バンコクは静かな追悼の朝を迎えた。主要駅の照明は落ち、音楽は消え、人々は黒を基調とした服に身を包んだ。「精神的な支えを失った」「国政の行方は……」。不安を抱えながら、亡き「国父」の冥福を祈った。
バンコク中心部を東西に貫く高架鉄道。通勤・通学の利用者が行き交う駅は普段のにぎわいが消え、人々は押し黙っていた。前日までは国王のイメージカラーの黄色や健康回復につながると信じられているピンクであふれていたが、この日は一転、大半が黒でそろえた。バス停では人々が白黒の号外に目を落とした。
国王の死に乗じて社会を不安定化させる動きが出ないよう、警察当局は辻々に要員を配置し、公共交通機関や政府関連施設、観光地などの警備を強めた。
テレビ各局は前夜から報道番組やバラエティーなど普段の放送を一斉に中断。政府の要請で当面の間、国王の功績をたどる映像や音声を繰り返し流す。
フェイスブックなどのソーシャルメディアでは、プロフィル写真を落ち着いた色に差し替えたり、国王を悼むメッセージを送り合ったりする現象が広がった。
娯楽の自粛が呼びかけられる中、経済への影響を心配する声も漏れた。洋服販売業のサンヤンさん(56)は「景気の先行きが見通せず、今日からどんなことが起こるのか不安でならない。王位継承が着実に進み、普段通りの生活が少しずつ戻るよう願っている」と語った。
国王が入院していたバンコク西部のシリラート病院。院内には黒と白の幕が張り巡らされた。周辺ではひつぎの搬出を待つ人が朝早くから列を作り、警官隊が規制線を張って警戒にあたった。中庭で肖像画を掲げ、祈りを捧げて夜を明かす人たちも。仕事を休んで3日目という建設作業員のナタウットさん(46)は「ご遺体が運び出されるまで少しでも国王の近くにいたい」と目を潤ませた。(バンコク=乗京真知)