講師で詩人の寮美千子さん(左)と夫の松永洋介さん=奈良市般若寺町
受刑者たちが詩に思いを込め、それを互いに読み合い感想を伝え合う……。建物の老朽化などのため、来年3月で閉鎖される奈良少年刑務所で、9年間にわたって続けられていた「詩の授業」が幕を閉じた。詩を通じ、心を開いていく受刑者たち。9月16日にあった最後の授業を、モニター画面を通じて取材した。
■信頼取り戻す場
9月16日午後、教育棟の一室。20代の男性受刑者8人と、講師の詩人、寮(りょう)美千子さん(60)や教育専門官ら5人が机を囲んでいた。受刑者一人ずつが自作の詩を読み上げ、まわりが感想を述べていく。3番目の男性が静かな声で詩を読み始めた。
良い出逢(であ)いなんてある訳ないと思っていた
すぐに離れていくと感じていた
それならずっとひとりでいいと思い続けてきた
でも今は全て逆の事を感じている(略)
もうこれからはひとりじゃない(略)
この出逢いは僕の宝物です
本当に“ありがとう”
題は「出逢い」。男性の二つ隣に座った受刑者は「僕らのことそう思ってくれてすごくうれしいです」。さらにその隣の受刑者はほほえみながら言った。「○○さん(男性)は独りじゃないです」
男性はそれを聞き、手にした紙…