クルーズ船客の消費を取り込もうと開かれている物産展=宮崎県日南市の油津港
今年に入って日本を訪れた外国人客が2千万人を超えたと、国土交通省が31日発表した。年間で2千万人の大台を突破するのは初めて。中国などアジアからのクルーズ船客が急増し、伸びを牽引(けんいん)している。ただ、訪日客の伸び率は鈍化しており、地域経済へのプラス効果も期待されたほどではないようだ。
今年1年間の訪日客数は、前年比2割増の2400万人前後になる勢いだ。とくにクルーズ船での訪日客が増えており、今年は前年の倍の200万人強になるとみられている。
クルーズ船は日本の地方都市にも寄港する。国交省は「地方創生」につながるとして、クルーズ船向けの港湾整備費として、2017年度予算で16年度当初比66%増の137億円を要求した。
だが、地域経済への恩恵は、政府の期待ほど広がっていないのが実情だ。
宮崎県日南市の油津港。10月中旬の朝、マンションのように多くの客室を備えるクルーズ船が岸壁に到着し、降りてきた訪日客が大型バスに乗り込んでいった。宮崎県内の神社を二つ回った後、地元商店街には寄らず、県外企業が運営する免税店に向かった。この店はクルーズ船が来港したときだけ開く。地域に恩恵を広げようと、地元商店などが出店する物産展を日南市などが港で開く動きもあるが、地元商店街のパン店で働く女性は「訪日客が増えても、私たちにはいいことがない」とこぼす。
日本に寄港するクルーズ船ツアーの多くは、中国の旅行会社が企画している。中国を出発し、韓国と日本を回るコースが典型だ。
寄港地での行き先を決めるのは、ランドオペレーター(ランオペ)と呼ばれる仲介業者。立ち寄る免税店からマージン(手数料)を受けとる。高額なマージンの店ばかりに行き、その店で割高な商品を売りつけられるなどのトラブルも報告されている。中国でも「ぼったくり免税店」と問題視する報道が出始めている。
ランオペを規制する法律は、日本にはない。観光庁は6月に実態調査を始めたばかりで、対応はおくれ気味だ。(柴田秀並)