高倉健さん主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」が撮影されたJR根室線幾寅(いくとら)駅は台風被害で運休が続き代替バスが走る。今後、バス転換も協議される=16日、北海道南富良野町、長谷川潤撮影
JR北海道は18日、全路線の営業距離の約半分にあたる10路線13区間(1237・2キロ)について、もはや自社単独では維持できないと正式発表した。人口減少や自動車利用への転換で、利用客が減っているためだ。同社に限らず、全国の地方路線も苦境にあえぐ。
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「将来にわたり路線維持することは困難だ。民間企業の事業として担えるレベルを超えている」。JR北の島田修社長は18日の会見でこう述べ、発足から30年目に、同社として最大規模の路線縮小に踏み込むことに理解を求めた。
見直し対象の13区間は昨年度の1日1キロあたりの平均乗客が2千人未満。200人未満の3区間は1列車の平均乗客が10人と特に少なく、バスへの転換を協議する。残る10区間も駅の廃止や運賃値上げ、自治体に線路維持を任せ、JRは運行に専念する「上下分離方式」などを協議する。いずれも2020年春までに合意を目指す考えだ。
沿線人口の減少で乗客も減った一方、高速道路は30年で6・5倍に延びた。赤字の穴埋めとなる「経営安定基金」の運用益はピーク時より半減。投資が不十分で特急の脱線炎上事故などトラブルも相次いだ。昨年度は全14路線が赤字、今年度の営業赤字は過去最大の440億円と予想する。安全投資などで国から1800億円の支援を受けるが、「バケツに穴の開いた状態」(島田社長)だ。返済にも事欠く可能性が迫り、赤字路線の大幅な削減を迫られた。
協議の相手となる自治体は道内の約3割の56市町村にのぼる。大半が財政難で、バス転換や応分の負担を求められることに早速身構えている。高橋はるみ知事は18日、「大きな危機感を持って受け止めている。JR北海道は、徹底したコスト削減など最大限の自助努力を進め、拙速な対応をしないよう強く求める」との談話を出した。(上地兼太郎、花野雄太)