手記や戦争体験について思いを語る水木しげるさん=昨年6月、東京都調布市 漫画家の水木しげる(本名・武良茂)さんが93歳で亡くなって30日で1年。一周忌を前に、妻・布枝さん(84)が朝日新聞のインタビューに答え、水木さんが「短い人生、狭い地球で殺し合いをするなんてばかげたことだ」と非戦の思いを込めて描いていたことなど、夫の在りし日の思い出を話した。 ――亡くなった時のことを教えてください。 100歳までは生きてくれると思っていました。頭を打って急きょ手術して入院。「お父さん、がんばってください」と声をかけ続けましたが、あっという間に逝ってしまいました。まさかこんなお別れがあると思ってもいませんでした。 ――どんな方でしたか。 偉大な人でした。戦争で九死に一生を得て、みんな亡くなる中で生き延びて、底辺の時代も長かったけれど、最後は描きたいものを描いた。作品を世に出したいという熱意はすごかった。 ――根っこは戦争体験でしょうか。 南方戦線で歩哨に立っている時、明け方の景色がきれいで見とれていたら、パンパンと銃声がしてみんな亡くなって。本人はずーっと逃げて、逃げて。ある所で何か壁があって進めない。明るくなって見ると、その先は断崖絶壁だった。本人は「ぬりかべに助けられた」と言っていました。それから、現地の人とつきあうことは禁じられていたけど、仲良くなってバナナをもらうとか、片手になっても生きながらえることができた。「にこっと笑顔を向けると、どこの人も胸襟を開いてくれるんだよ」とよく言っていました。 ――作品で伝えてきたことは何だと感じますか。 「人間って何てばかなんだろう… |
「最後は描きたいもの描いた」 妻が語る水木しげるさん
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