関門海峡で昨年11月、コンテナ船とケミカルタンカーが衝突した事故について、国の運輸安全委員会は24日、海上保安庁の管制官の間違った情報提供により、双方が相手の針路を誤って認識したことが原因とする事故調査報告書を公表した。同海峡で2009年に海上自衛隊の護衛艦とコンテナ船が衝突した事故に続き、再び海保管制の関与を認定する結果となった。
報告書によると、昨年11月3日昼、太刀浦コンテナターミナル(北九州市)を出港して西へ向かうコンテナ船と、航路を東へ走るタンカーがすれ違いざまに衝突。第7管区海上保安本部の関門海峡海上交通センター(同)が両船と無線で交信する中で起きた。
コンテナ船を操船する水先人は出港時、センターの管制官にタンカーの前を横切って航路に入ると連絡。だが無線は雑音混じりで、管制官は、コンテナ船が航路内の船の優先を定めた港則法に従ってタンカーの後方から航路に入ると思い込み、「了解」などと答えた。やり取りを横で聞いていた別の管制官が、その情報をタンカーに連絡。タンカーはコンテナ船が自船の後方を通ると認識して航行を続け、衝突に至った。
報告書は海保側の責任のほか、水先人が港則法に従わずに航路へ進入したことや、センターとのやり取りで互いの操船意図が通じていると思い、両船同士の無線連絡がなかったことも事故の一因と指摘した。
7管は昨年12月、両船の船長と水先人、コンテナ船と交信していた管制官の4人を業務上過失往来危険の疑いで書類送検。いずれも嫌疑不十分で不起訴となっていた。(佐々木康之)