今月7日に閉館した青森県むつ市のホテルニュー薬研。従業員は「ご愛顧ありがとうございました」の横断幕で最後の団体バスを見送った=隈元信一撮影
ホテルや病院、学校など古くて大きな建物に対し新たに義務づけられた耐震診断の結果の公表が、一部の自治体で始まった。大地震に備えて改正された耐震改修促進法による措置。今後、全国1万2千棟前後の対象施設の危険性の有無が明らかになる。耐震不足が判明し、営業を断念する宿泊施設も現れた。
【災害大国】あすへの備え 耐震化で命を守る
南海トラフ巨大地震の揺れで最大10万7554棟の全壊を想定する愛媛県。10月31日、香川県とともに全国で初めて37件のホテルなどの耐震診断の結果を公表した。
1971年完成の愛南町のホテルサンパールは、大地震の際に「倒壊の危険性が高い」とされた。鉄筋コンクリート3階、18部屋(定員58人)。最近は赤字が続き、昨年度は1035万円の純損失を計上。公表後の稼働率は現時点では昨年とほぼ同じだが、経営は苦しい。
岡田治支配人は「今後の選択肢は建て替えか改修、業種転換、あるいは廃業だ。ただ、従業員約30人の雇用も守らなければならず、対応を決めきれない」と悩む。
今回の耐震診断の結果の公表は、2013年11月に施行された改正耐震改修促進法に基づく措置。対象は1981年以前の旧耐震基準で建てられた全国の物件のうち、3階建て5千平方メートル以上の病院やホテル、百貨店など21種類の建物。15年末までに診断を実施しなければならず、その後、都道府県などが結果を公表する。
耐震性は、震度6強から7の地…