南京大虐殺記念館で開かれた追悼式典=13日、南京市内、冨名腰隆撮影
日中戦争時に旧日本軍が多数の中国人を殺害した南京事件から79年となる13日、中国江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」で追悼式典が開かれ、地元市民など約1万人が参加した。雨天の中、1分間の黙禱(もくとう)の後に演説した共産党政治局員の趙楽際・党中央組織部長は「記憶をとどめ、真相の否定を防ぐ」と語った。
中国政府は一昨年、13日を「国家追悼日」に定め、追悼式典も国家主催に格上げし、重視してきた。一昨年は習近平(シーチンピン)国家主席が出席したが、以降は最高指導メンバーの政治局常務委員は参加せず、日中関係に一定の配慮がなされた形だ。
一方、中国は昨年、事件をユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界記憶遺産に登録するなど、記憶風化への危機感は強い。趙氏は演説で「南京大虐殺は国際法上の定論であり、動かぬ証拠がそろっている。記憶を抹殺したり言い逃れしたりすることはできない」と強調した。
国営新華社通信によると、事件の被害者で現在も生存する人は108人に上る。式典に参加した男性(80)は「多くの家族を失った事件を忘れることはできない。安倍(晋三)首相にもここに来て、祈ってほしい」と語った。(南京=冨名腰隆)