愛知県議会の政務調査費(現・政務活動費)が目的外に使われたとして計約8100万円の返還を命じた判決の確定を受け、議会側は20日、全額の返還を決めた。だが、返還が多額に上るうえ、引退した人や故人も対象に含まれ、関係者から恨み節が出ている。
「慣例に従っただけなのに」「カネ貸してよ。分割払いできないの?」――。20日、県議らは司法判断への不満で持ちきりだった。返還額は多い人で約200万円に上る。
問題になったのは、2009年度に自民、民主(現・民進)、公明の3会派82議員が事務所家賃や自動車リース代として使った政調費。最高裁が今月15日付で県側の上告を退けた。
議会側は20日、鈴木孝昌議長や3会派代表らが会談し、来年2月13日までに各会派が対象者から返還金を集め、県に支払うことで合意した。
対象にはその後引退した元議員や故人も含まれる。11年に引退した鈴木愿(すなお)・元県議(77)は事務所家賃約86万円の返還を求められる。「請求されても払えない。今は無職だから困る」と話す。13年に亡くなった寺西学・元県議は車のリース代約69万円の返還を求められる。長男で現職県議の睦氏は「父は反論もできない。遺族としては不条理な印象を受ける」と語った。
県議らの不満の背景には、09年度当時も県議会の内規に政調費の使途として家賃やリース代が掲げられていたという事情がある。条例に明記されたのは13年度だった。ある県議は「議会事務局に助言されたから、車を買わずにリースで使ったのに」と憤る。
一方、原告の名古屋市民オンブズマンの新海聡代表は「県議側は家賃やリース代が議員の調査研究に資すると立証できなかった。形式的に使途として条例に記しても適法とは言い切れない」と指摘。家賃や車のリース代が政活費にふさわしいか改めて議論すべきだと主張している。(斉藤太郎、佐藤英彬)