在日コリアンの人権擁護活動をしているNPO「コリアNGOセンター」(大阪市生野区)が、区内で29日に予定されていた「ヘイトスピーチ」のデモの差し止めを求めた申し立てに対し、大阪地裁(森純子裁判長)は20日、大阪府内の団体メンバーの男性にデモの実施を禁じる仮処分決定を出した。センターの事務所から半径600メートル以内での侮辱や名誉毀損(きそん)行為の禁止を命じている。
特定の人種や民族を標的に差別をあおる「ヘイトスピーチ」をめぐっては、解消に向けた対策法が今年5月に成立。横浜地裁川崎支部は6月に初のデモ禁止の仮処分決定を出した。
センターが13日に提出した申立書によると、団体は在日韓国・朝鮮人を差別し、日本から排斥することを目的とした活動を展開。「1匹を殺すことは、同胞である日本人10人を助けることになる」「犯罪率は突出している」などと主張している。29日のデモ開催をインターネット上で告知し、参加者を募っていた。
これに対し、センターは「在日コリアンの尊厳をないがしろにし、耐えがたい苦痛を与え、(センターの)職員の士気が著しく低下する」と指摘。「平穏に事業を行う人格権が侵害される」と主張し、差し止めを求めていた。
大阪地裁は仮処分の決定理由について通知していないが、センターの郭辰雄(カクチヌン)代表理事は「デモは聞くに堪えない言葉を並べたて、在日コリアンの平穏を脅かすもので認められない。今回の仮処分は非常に画期的で歓迎すべき判断をしてもらった。大きな一歩になった」と評価した。
一方、仮処分決定を受けた男性は「今回は防犯パトロールで、ひとりでも多くの善良な市民に、朝鮮人の犯罪に遭わないよう、身の回りに危険があることを伝える目的だった。今回はヘイトスピーチにあたらないと考えている」とコメントした。