会見で、辞任を発表する電通の石井直社長=28日午後7時20分、東京都中央区、諫山卓弥撮影
電通の違法長時間労働の問題が、経営トップの引責辞任に発展した。28日の記者会見で辞任を表明した石井直(ただし)社長は、「働き方すべてについて見直していく」と労働環境の改善継続を強調したが、問題の背景となった企業風土を抜本的に改めるのは簡単ではない。
電通社員で昨年12月25日に過労自殺した高橋まつりさん(当時24)の労災が認定された今年9月以降、石井社長がこの問題で記者会見するのは初めて。石井社長は「遺族に対する謝罪を最優先させて(記者会見を)決めた」と説明。対応が遅れた認識は「ない」とした。
電通は、高橋さんの自殺について、外部の法律事務所に調査を依頼したことも明らかにした。中本祥一副社長はその結果について、「彼女の人権を侵害することはなかった」としながらも、「長時間労働に加え、パワハラとの指摘も否定できない行き過ぎた指導があった」と説明。「心情や不安を思いやる想像力やサポートが足りなかった」と話した。
石井社長も「入社まもない社員で本人が一生懸命働いている中で、通常の社員と同じ指導がなされていた。それは全体としてハラスメント」と述べた。
電通は、労使で結んだ時間外労働の基準を超える違法な長時間労働は、2013年の月平均1573件から16年は同1・4件と大幅に減る一方、過少申告が増えた可能性があったと説明。中本副社長は「違反者をゼロにするという施策をうち、そういうものを結果として強いてしまったことは否めない」と述べた。