8月7日、通算3千安打を達成し、チームメートと抱き合って喜ぶイチロー=AP
プロ人生で初めて味わう屈辱だった。
開幕直後、4月16日のブレーブス戦。ベンチスタートのマーリンズのイチローに、六回1死一、二塁の好機で出番が回ってきた。9番の投手の代打。ネクストバッターズサークルで素振りをしながら、精神を統一していると、ブレーブスの投手が左腕に交代した。
即座に、味方ベンチも動いた。イチローの代打として、右打者が告げられた。大リーグ16年目、当時42歳のベテランにまさかの「代打の代打」。イチローは、打席で1球も見ることもなくベンチへ退いた。
このとき、大リーグ史上30人目、日本選手初となる通算3千安打まで残り「63本」。今後も控えの外野手として扱われるイチローが、この約4カ月後に大台に到達することを予想する声は、多くなかった。
昨季は大リーグで自己最低の打率2割2分9厘。年齢による衰えも指摘され、米ワシントン・ポスト紙は今季の出場機会減少を予想した上で、開幕前に「今季は3千安打記録に届かない」とも報じていた。マーリンズのヒル・ゼネラルマネジャー(GM)は振り返る。「どれぐらい活躍するのか、正直、未知数だった」
イチローの4月の先発出場は、…