宝山酒造の渡辺桂太さん(中)と若松秀徳さん(左)と農家の富山喜幸さん
20代の若者だけで造る日本酒「二才(にさい)の醸(かもし)」という銘柄が、埼玉県幸手市の酒造会社から新潟市の会社に移った。極めて珍しい銘柄の譲渡。50代で一人前とも言われる日本酒造りの世界で、若い世代の日本酒離れを食い止めようと誕生したブランドが、酒どころで「2代目」として引き継がれる。
「若い人に日本酒に興味を持ってもらい、清酒出荷量上位の埼玉をアピールしたい」。二才の醸は、石井酒造(幸手市)の石井誠社長(29)のそんな思いから生まれた。1840年から続く酒蔵の8代目蔵元を、2013年に26歳で継いだ。業界では異例の若さだった。
製造責任者である杜氏(とうじ)の和久田健吾さん(30)も当時27歳。「日本酒が苦境にある中、自分にしかできないことは何だろう」。翌年思いついたのが、20代だけで酒を造るという挑戦だった。
「酒造りをなめるな」。経験に裏打ちされた勘がものを言う職人の世界。周囲からは異論も聞こえた。だが「酒造りに経験は欠かせない。でも最も重要なのは酒にかける『想(おも)い』だと思う」と石井さん。「青二才」から「青」を取り去って、若者ではあるが、堂々と酒を造るという意味を銘柄に込めた。
最初の14年度は甘口で切れの…