国内製薬最大手の武田薬品工業は9日、米医薬品ベンチャー企業のアリアド・ファーマシューティカルズ(マサチューセッツ州)を約54億ドル(約6300億円)で買収すると発表した。近く株式公開買い付け(TOB)を実施し、来月末までに完了する予定だ。買収により、重点領域の一つに掲げるがんの治療薬を強化する。
アリアド社は1991年に設立されたベンチャー企業。血液がんの一種である慢性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病の治療薬などを世界で手がける。17年には、武田が手薄だった肺がんの治療薬が米国で承認される見込みだ。こうしたがん治療薬の開発により、さらなる成長が見込めるという。15年の売上高は約1億1880万ドル(約138億円)。
武田は11年にスイスの医薬品メーカーのナイコメッドを1兆1千億円で、08年に米医薬品ベンチャーのミレニアムを9千億円で買収した。それに次ぐ規模の大型買収となる。武田は昨年12月、子会社で研究用試薬を手がける和光純薬工業(大阪市)を富士フイルムホールディングスへ売却すると発表するなど、事業の選択と集中を進めている。(宮崎健)