東京都の豊洲市場(江東区)の土壌汚染を調べるため、都が2年間続けてきた地下水検査の最終結果が14日公表され、環境基準の最大79倍の有害物質が検出された。調べた敷地内の201カ所のうち72カ所から基準超の物質を検出した。ほとんどが基準値以下だったこれまでの結果と大きく異なることから、都は原因を詳しく調べる方針。築地市場(中央区)からの移転に向けた行程が遅れるのは必至だ。
豊洲地下水、基準79倍の有害物質 70カ所で超過
小池百合子知事は14日、記者団に「想定を超す値で驚いた。今後の方向性を(安全性を検討する)専門家会議などで議論いただき、日程もその結果次第」と話した。「食の安全重視」で移転を延期した小池氏は難しい判断を迫られる。
結果によると、検出されたのはベンゼン、ヒ素、シアンの3種類。地下水1リットルあたりの濃度を観測した結果、ベンゼン(環境基準は0・01ミリグラム)は35カ所で最大0・79ミリグラム、ヒ素(同)は20カ所で同0・038ミリグラム、シアン(環境基準は「不検出」)は39カ所で同1・2ミリグラムをそれぞれ検出した。環境省の資料によると、基準値は1日2リットルの地下水を70年飲み続けても健康に有害な影響がない濃度とされる。水銀と鉛は検出されなかった。
検査は、都が土壌汚染対策工事を終えた後の2014年11月に2年間の予定で開始。昨年6月公表の7回目までは基準値以下にとどまり、同9月公表の8回目で初めて基準の1・1~1・9倍のベンゼンとヒ素が3カ所で検出された。
都の専門家会議(座長=平田健正・放送大和歌山学習センター所長)は14日、今回の結果について、これまでとの変動が大きいため「暫定値」として公表。都によると、今回の調査は前回までとは違う調査会社が受託したという。採水方法などで実態と異なる結果が出ることもあるといい、平田座長は「原因は調査したうえで判断したい」。複数の会社に委託し、専門家会議が直接関わる形で3月までに再調査する。
一方で、今回の値について健康への影響を記者会見で問われた内山巌雄・京都大名誉教授は、地下水が環境基準を超えたとしても「飲むわけではなく人体に影響はない」と話した。
小池氏は昨年8月、「地下水検査を予定の全9回終えてから判断する」として豊洲への移転延期を表明し、同11月に移転に向けた行程表を公表。専門家会議の意見集約は今年4月の予定だが、今回の結果に関する再調査で、行程は遅れる見通しとなった。