東京オートサロンにRE雨宮が出展したマツダRX―7のチューニングカー=1月13日、千葉・幕張メッセ、竹谷俊之撮影
ロータリーエンジン(RE)搭載車がマツダのラインナップから落ちて久しいが、チューニングの素材としてはいまだ現役で、先日あったカスタムカーの祭典「東京オートサロン」でも、REの出展が目に付いた。中でも、REチューニングの老舗ショップ「RE雨宮」(千葉県富里市)が手がけた、3ローター化して怪物的な馬力を絞り出すRX―7に人だかりができるなど、注目度は高い。いまだに走り屋たちを引き付けてやまないREの魅力とは何か? 業界の第一人者でもあるRE雨宮の雨宮勇美代表(70)に聞いた。
特集:飽くなき挑戦 ロータリーエンジンの半世紀
特集:東京オートサロン2017
◇
■小さいのにハイパワー
40年ほど前の話になりますが、僕がロータリーで一番初めに買ったのはファミリア。エンジンは10Aで、当時約100馬力でしたか。(当時の国内レースで常勝を誇った)日産スカイラインGT―Rが160馬力ありましたが、ファミリアのほうが速かった。時速180キロ出ました。
速いうえに、スムーズにエンジンの回転が上がる。あと、コンパクトさが魅力だった。「小さい車なのにハイパワー」というのが僕は好きだったんです。
RE雨宮のチューニングカーで一番人気があったのが、軽のマツダ・シャンテ(1972―76年)です。昔の話ですが、シャンテにロータリーを載せて、東名高速でポルシェ930ターボと互角に競い合った(笑)。それで人気が出ました。
※注:マツダは当初、シャンテにREを載せて史上初の軽RE車として市販しようとしたが断念。雨宮代表はチューニングによって幻の計画を実現した、とも言える
■壊れても一晩で直せる
チューニングの素材として言えば、まずロータリーは一般的なレシプロエンジンに比べてコンパクトです。作りが積み木みたいで、壊れてもほとんど一日でオーバーホールできる。レシプロを本当にチューニングする場合には、かなりの技術が必要になるし、壊れた時に外に修理に出さざるを得ない部品もある。でも、ロータリーはカムが無いので楽だし、夜に壊れても朝までに組み直せます。パーツも少ないので、チューニングは意外と簡単なんですよ。
■燃費は悪いけど…
ロータリーの悪いところもあります。燃費です。たとえば、カーレース「スーパーGT」の300馬力のマシンでも、燃費はより高性能な500馬力のレシプロのマシンと変わらないぐらいだった。だけど、燃費が悪くても勝てた。やっぱりエンジンが良いからですね。
FD3S(3代目RX―7、通称『FD』。1991年発売)から、ロータリーを積んだ車のトータルバランスが良くなったと思います。エンジンが小さくて車高も低いから、本当に速い。
もうかなり古い車だけど今でも根強い人気があるのは、レースでの走りがポルシェとそれほど変わらないからかな。車の元々の作りも良いし、次に出たRX―8(2003―12年販売の4ドアクーペ。現時点で最後のRE搭載車)もそうですが、コーナリング特性とエンジンのマッチングが良いですね。
とにかく、スポーツカーに対するマツダの取り組みはすごい。今でもマニュアル車を作ってるし、足回りやシャシーなど車のバランスが優れています。ロータリーの性能だけではレースで勝てないですからね。
■今でもFDはバツグンだ
でも、今後はレースは厳しいんじゃないかな。新しいエンジンがないとね。できても、重量が重ければ厳しい。ロータリーを作ってきたのは世界中でマツダだけで、他のメーカーも結局、燃費などの理由で開発をやめてしまった。だから正直なところ、(REをめぐる技術開発は)あまり進歩していない印象もあります。
僕がこれから乗りたい車ですか? 軽くて、峠を走った時に楽しい、レスポンスとコーナリングの良い車ですね。最高速はそんなに出なくていい。時速300キロ超もいらない。250キロ出れば十分です(笑)。
もうこの歳でシャンテに乗るのは厳しいけれど、やっぱりFDはいいですね。僕はポルシェが好きで他の車もいろいろ乗るけど、ロータリーを積んだFDのハンドリングの良さはバツグンですよ。(構成・吉村真吾)