トランプ次期大統領に関わるテレビ番組のスポンサーを降りる――。川崎重工業の米国法人の広報担当者がこんなコメントをし、米メディアが報道した。だがこれは川重の見解とは異なっていた。川重は、「一貫して政治的に中立な立場だ」と表明するなど、火消しに追われている。
川重広報の説明によると、ことの発端は米国で16日に放映された人気のテレビ番組「ニュー・セレブリティ・アプレンティス」。トランプ氏が昨年までホスト役を務め、大統領選後も制作総責任者の肩書が残る娯楽番組だ。
16日の番組では、川重の「カワサキ」ブランドのオートバイを取り上げた1回限りの企画コーナーが放映された。ところがそれを見た反トランプの市民団体が、カワサキの不買運動をネットで呼びかけ始めたという。
不買運動を受けた米メディアからの取材に、米国法人の担当者は、「トランプ氏が関わる限り番組には関与しない」などと答えたところ、それが報道された。番組スポンサーから降りるとも発言したが、実際にはもともと番組スポンサーではなかった。
川重は、「広報担当者が会社の見解と異なる発言をしてしまった」などと釈明。改めて政治的な中立姿勢を示して、事態の沈静化を図っている。
米国では、トランプ氏や同氏の関係する企業と取引する企業などへの不買運動が起きている。大統領選後の昨年11月には、シューズブランド、ニューバランスの広報担当者がトランプ氏を支持する発言をして、街中で靴が燃やされたこともあった。(伊沢友之)