葛飾北斎の錦絵「百物語」=広島県三次市提供
「もののけ文化」で町おこしをめざす広島県三次(みよし)市が、妖怪にまつわる絵巻物や珍品を展示する博物館の建設を決めた。展示の核になるのは、妖怪コレクターが生涯をかけて収集した資料3千点。市は2018年の開館を予定している。
資料を集めたのは、東京都江戸川区の湯本豪一(こういち)さん(66)。「日本人の想像力で生まれた独自の文化を後世に伝えたい」との思いから、約30年前から妖怪にまつわる美術品などの収集を始め、これまでに私財1億円以上を投じたという。
一方、島根県に隣接する山間部にある三次市は、江戸時代の妖怪物語「稲生物怪録(いのうもののけろく)」の舞台としても知られ、「もののけ」の伝承を生かした地域の活性化を模索していた。折からコレクションの展示・管理施設を探していた湯本さんと、市の思いが一致。博物館の建設を条件に、湯本さんが市に収集品を無償譲渡することが決まり、昨年末に双方が契約を結んだ。
寄贈される3千点のコレクションには、様々な妖怪が行列する様子を描いた「百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)絵巻」や、怪談を題材にした葛飾北斎作の錦絵「百物語」など、貴重な作品も多い。妖怪を描いた着物や陶磁器、紙芝居やポスターなど近現代の資料のほか、「烏天狗(からすてんぐ)のミイラ」や「竜の頭蓋骨(ずがいこつ)」と伝えられる珍品もある。
市が建てる博物館の愛称は「三次もののけミュージアム」となる予定。総事業費約12億円を見込み、「もののけ文化」をテーマにした展示棟のほか、観光情報を提供する交流棟も建てる計画だ。湯本さんは川崎市市民ミュージアムの元学芸室長で、経験を生かして施設設計や展示内容について市に助言するという。
湯本さんは「専門の博物館ができることになり、妖怪たちも喜んでいると思う。地元の人に理解を深めてもらい、妖怪文化の魅力を広く国内外に発信していきたい」。増田和俊・三次市長は「貴重な資料を譲っていただき、大変ありがたい。活用して街を元気にしていきます」と話す。(泉田洋平)