室伏さん(左)に指導を受けながらトレーニングするオリックスの吉田正
■スコアの余白
昨秋の高知キャンプ中、オリックスの吉田正は一通の手紙をしたためていた。宛先はアテネ五輪陸上男子ハンマー投げ金メダリストで東京医科歯科大教授(スポーツ科学)の室伏広治さん。トレーニングや精神面について教えてほしいといった内容を便箋(びんせん)1枚にびっしりと書き込んだ。
特集:スコアの余白
幼い頃、テレビで見た室伏さんの身体能力の高さに憧れた23歳は、1年目の昨季、開幕スタメンをつかんだ。腰の故障で離脱し出場は63試合どまりだったが、8月の復帰後1カ月余りで10本塁打。今季は主軸候補として期待を集める。
そのためにもフル出場できる体作りが必須だ。シーズン終了前から、自分なりにトレーニングをまねたこともあった室伏さんが頭に浮かんでいた。「誤字脱字がないように、失礼のないように何回も手紙を書き直した。自分なりにきれいな字で書きました」
誠意は届いた。室伏さんは「自己管理が人まかせになりがちなアスリートもいる中、探求心があって立派」と話す。指導は1月に3度あり、25日は報道陣に公開。40キロのバーベルの両端に室伏さんが使っていたハンマーをぶらさげて一定に揺らしながらスクワットするなど、体全体の安定性と筋力アップが図られた。
吉田は「けがをしないためには全身のバランスが大事だとわかった。継続していきたい」と話す。強さを求めて踏み出した吉田の今季が楽しみだ。(藤田絢子)