常連客でにぎわう「流民」の店内。右端はオーナーの松本進さん=28日夜、東京都新宿区、諫山卓弥撮影
昨年4月に火災に見舞われた東京・歌舞伎町の飲食店街「新宿ゴールデン街」で、店舗の再建を進めていた最後の1店が28日夜、営業再開にこぎつけた。店主らは「火災以前より、街をもっと盛り上げていこう」と意気込んでいる。
「久しぶり! おめでとう」。9カ月ぶりに営業したバー「流民」。28日午後6時の開店を前に常連客らが行列をつくり、近所の店主たちも差し入れの食べ物や酒瓶を手に次々に集まった。オーナーの松本進さん(36)は「おかげさまで復活できました。乾杯!」とあいさつし、ほっとした表情を見せた。
12席のカウンターには入れ代わり立ち代わり、再開を祝う客が訪れた。常連の女性(37)は「この店に来ればいつも誰か知った顔がいる。ここが再開して本当に復活した感じがする」と喜んだ。
ゴールデン街は古い木造長屋に飲み屋やバーなどが入る密集地。戦後に露天商らが集まり、飲み屋街に発展した。直木賞作家の故佐木隆三さんら多くの作家が常連客に名を連ね、歌人の俵万智さんは社会勉強のために、とここで働いた。映画監督、役者、歌手ら文化人が夜な夜な行きつけの店に集っては映画論や文学論を戦わせ、サブカルチャーの発信地にもなった。最近は外国人観光客も集う。
火災は昨年4月12日午後1時半ごろに起きた。新宿区などによると、ゴールデン街の一角など約300平方メートルが焼けた。被災した店舗は17にのぼった。
直後から、被害を免れた店が焼…