今回の訴訟と裁判所の判断
相続税対策を理由に、孫を養子にした男性(故人)の養子縁組が有効かどうかが争われた訴訟で、最高裁第三小法廷(木内道祥裁判長)は31日、「節税目的の養子縁組であっても、ただちに無効にはならない」とする初めての判断を示した。「節税目的の養子縁組は無効」とした昨年2月の二審・東京高裁判決を破棄し、「有効」とした一審・東京家裁判決が確定した。
判決などによると、福島県の男性は2012年、当時1歳だった孫を養子にした。孫は長男の息子で、法定相続人が増えて相続税の非課税枠が広がるとともに、長男一家の相続分が増える形になる。これに対し、男性の実の娘らが男性の死後に「養子縁組は無効だ」として提訴した。
15年の一審判決は、男性が養子縁組の書類に自ら署名していることなどから、「養子縁組の意思があり有効」と判断した。一方、二審判決は、孫を養子にすることで節税効果があるとの説明を男性が税理士から受けていた点を指摘。養子縁組は節税が目的で「真の親子関係をつくる意思はなかった」として無効とした。
第三小法廷はこの日、「節税目的と縁組をする意思は併存しうる」と指摘。専ら節税のためであっても、ただちに民法が縁組を無効にできると定めた「縁組の意思がない時」に当たるわけではない、と述べた。二審判決は「縁組には『真の親子関係をつくる意思』が必要」としていたが、第三小法廷はこの点には言及しなかった。そのうえで、今回のケースでは「縁組の意思がなかったとうかがわせる事情はない」として、養子縁組は有効と結論づけた。(千葉雄高 千葉雄高)