トランプ米大統領が最近、日本の自動車産業や為替政策を批判している。米大統領選の選挙中には、日米同盟をめぐる不満も漏らしていた。10日の日米首脳会談を前に、どこまで正しくてどこに誤解があるのか、トランプ氏による発言の真偽を「ファクトチェック(事実確認)」の手法を使って調べてみた。
ファクトチェックとは
■「自動車貿易、公平ではない」→関税は撤廃、欧州車のシェアは増加
トランプ氏は先月23日、米企業経営者らとの会合で「日本では我々が車を売るのを難しくしているのに、彼らは見たこともない大きな船に数十万台の車を載せてやってくる。公平ではない」などと訴えた。
輸出の代表的な障壁は関税だ。ただ、自動車について日本は1978年、6・4%だった輸入関税を撤廃した。逆に米国は、日本からの輸入車に2・5%の関税をかけている。
ほかにも、米国は「日本の安全基準が厳しく、輸出の妨げだ」と主張する。だが、国土交通省によると、国際ルールの統一が進み、米国車にだけ不利な基準は基本的にないという。
日本の新車販売のうち、米国車のシェアは2008年から16年にかけて0・2~0・3%だったが、欧州車は3・6%から5・7%に伸びた。燃費の改善や右ハンドル対応なども進めてきたからだ。トランプ氏が指摘する日本の「壁」は、的外れと言えそうだ。
一方、15年に米国が輸入した自動車のうち、日本からは160万台。190万台規模のメキシコ、カナダに次ぐ上位だが、ピークの343万台(86年)からは半減した。ただ、高級車が増え、日本の16年の対米輸出額のうち、自動車は4・4兆円で3割超だ。金額はこの20年で倍増した。
こうした輸入品のせいで米国の製造業が衰退し、貿易赤字が拡大、国内の雇用も奪われたとするトランプ氏の主張は、間違いとは言い切れない面もある。
しかし、トランプ氏の主張が一面的であるのは否めない。貿易摩擦が激しかった80~90年代前半、日系メーカーは輸出減を求められ、米国で現地生産を増やした。86年は42万台だったが、15年には384万台となり、日本からの輸出の2倍超に伸びた。工場のほか販売店などを含めると、約150万人の雇用につながっている。
米国の貿易赤字に占める日本の割合も、ピークの91年には65%だったが、15年は9%。中国の49%、ドイツの10%を下回る。それでもトランプ氏が日本車をたたく理由には、米国内で増す存在感もありそうだ。日本車の販売シェアは米国車と並ぶ約4割に達する。
トランプ氏は、就任演説で「米国製品を購入し、米国人を雇用する」と宣言した。古くからある「バイ・アメリカン」の思想だが、米国産日本車も米国製品ではある。それまで締め出せば、最大の目的の雇用維持も難しくなりかねない。(経済産業省担当・高木真也、自動車業界担当・青山直篤)
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