記者会見の冒頭で頭を下げる綱川智社長(右)=14日午後6時32分、東京都港区、関田航撮影
東芝は14日、昨年4~12月期決算(米国会計基準)で米原子力事業を巡って7125億円の損失を計上し、純損益が4999億円の赤字(前年同期は4794億円の赤字)になるとの見通しを発表した。昨年12月末時点の自己資本はマイナス1912億円と債務超過に陥る。半導体事業を分社化する新会社株式の売却割合を、これまでの20%弱から過半に引き上げることも検討し、今年3月末の債務超過回避を目指す。
東芝、決算発表の1カ月延期を申請 監査委が追加調査
特集:東芝の巨額損失問題
東芝が債務超過に陥るのは、1962年の連結決算の開示開始以降で初めて。今年3月期の見通しは、純損益が3900億円の赤字で、3月末の自己資本はこのままならマイナス1500億円と債務超過が続く見通しで、資本対策を急ぐ。綱川智社長は記者会見で「資産売却などあらゆる手をやっている」と話した。
東芝によると、米原発子会社ウェスチングハウス(WH)が米国で受注した原発4基の建設工事費用が、当初の想定から61億ドル(約6900億円)も増加。東芝の原子力事業全体の価値を見直した結果、7千億円強の損失計上を迫られる見通しになった。再発防止策として、綱川社長を委員長とする原子力事業監視強化委員会を新設。WHの株式保有割合(87%)の引き下げも検討する。
巨額損失計上の責任をとって、原子力事業を担当する志賀重範会長は15日付で辞任する。ただ、執行役にはとどまり、WHへの対応にあたる。綱川社長は基本報酬の削減幅を60%から90%に拡大。他の執行役も削減幅を広げる。
東芝は14日、同日予定していた昨年4~12月期の決算発表を最長1カ月延期することも発表した。WHが2015年末に買収した米原発建設工事会社の買収価格の事後調整を巡り、内部統制上の問題があった恐れが出てきたため。WHの経営者が社内で不適切な圧力をかけた可能性が内部通報で判明したという。決算の数値に影響する可能性があり、東芝の監査委員会による追加の調査に時間がかかるという。(川田俊男)
■東芝の発表の概要
【業績見通し】
・米原子力事業を巡る損失は7125億円
・昨年4~12月期の純損益は4999億円の赤字
・昨年12月末時点で債務超過(自己資本マイナス1912億円)
・昨年4~12月期決算の発表は最長1カ月延期
【対応策】
・米ウェスチングハウスの株式の保有割合引き下げ検討
・原子力事業を社長直轄とし、監視強化委員会を新設
・今後は海外での原発建設工事から撤退
・志賀重範会長は引責辞任し、執行役に
・半導体事業の分社化で新会社株式の過半売却も検討