転入超過が続く世田谷区。二子玉川駅周辺は2015年に「二子玉川ライズ」が開業し、さらに人気の地域となった
総務省が1月末に公表した住民基本台帳に基づく2016年の人口移動報告で、東京都は20年連続の転入超過となった。転入が転出を上回る超過数は7万4177人。依然、東京への「一極集中」が進んでいる。超過が多い区市を見ると、都心回帰が続く一方、新たな人気エリアも登場している。
都道府県間の移動者数は前年より6万人近く減り、227万人台。進学や就職など若年層の移動規模が小さかった影響という。転入超過は7都府県(東京、千葉、埼玉、神奈川、愛知、福岡、大阪)あり、トップの東京は2位の千葉を約5万8千人も引き離す。ただ、超過数は前年に比べ7519人少なく、5年ぶりの減少になった。総務省統計局の担当者は「東京でも今後減少傾向となるか、注視したい」と話す。
都内の自治体別では、世田谷区が5841人で2年連続の超過数トップ。区によると都内や近県からの転入が多い。以前は学生が目立ったが、いまは卒業後の20代半ばが目立ってきたという。出産数が死亡数を上回る「自然増」も年1500人程度で推移し、人口は90万人に迫る。「年代が偏らず、まんべんなく増えている」と保坂展人区長。
全国最多の待機児童数だけでなく、災害時の避難場所の確保など人口密集地ゆえの課題もある。保坂区長が力を入れるのが、地方との連携だ。現在約50自治体と交流し、催事での特産品などの出店も盛んだ。区長は「東京一人勝ちで地方が疲弊しては、都市部も立ちゆかなくなる」。大災害時の避難先にもなると考え、交流を広げていく。
2位は過去5年で最多の超過数となった中央区。晴海や勝どきの臨海部では1500戸前後の大型マンションの建設が続いた。1997年4月に7万1806人で底を打って以降、人口は増え続け、今年1月に15万人を突破。「今は増やすことが最重点でなく、増えた人口への対応が課題」(区民生活課)という。
同じくマンション建設の影響で人口急増の臨海部を抱える江東区は2539人で11位。前年まで続いた2位から下落した。区企画課は「引き続きマンション開発は盛ん。一時的なもの」と分析する。区は2029年に人口約59万人に達すると見込む。18年度に48教室ある第二有明小中学校(仮称)が開校するなど、受け入れる環境整備を進める。
4155人の超過で4位の板橋区は毎回上位に入るが、「定住につながっていない」と政策企画課。転入の多くが20~24歳で、都心より割安な家賃や物価で住む学生が多いという。区の分析では、就職や結婚、出産を機に区外に出る傾向が見られた。住み続けてもらえるよう、児童館の再整備や、出産前後の妊婦の見守りなど子育て支援に力を入れる。区内6大学と協定を結び、学生と地域のつながりを深める試みも始めた。
市部から唯一、上位10傑に入ったのが調布市だ。京王線3駅の地下化が12年に完了。調布駅では今秋開業の商業施設開発が進み、市内では大型マンションの分譲が続いた。不動産情報会社による賃貸住宅の「人気の沿線ランキング」で京王線は昨年、JR山手線、中央線に次ぐ3位。「新宿まで15分の利便性の一方、武蔵野の自然が残っている」。市広報課は人気の理由を読み解く。(井上恵一朗)