仮の拝殿を前に手や足の形をした絵馬を捧げ、大勢の人たちが手を合わせた=15日午前10時37分、熊本県嘉島町の甲斐神社、小宮路勝撮影
手や足の病を治す神様として信仰され「足手荒神(あしてこうじん)」と呼ばれる熊本県嘉島町の甲斐神社で15日、年に一度の例大祭があった。昨年の熊本地震で社殿は倒壊したが、仮拝殿として、兵庫県の神社から贈られた拝殿を境内に設置。朝から多くの人が参拝に訪れ、願いを書いて奉納する木製の手型、足型がうずたかく積み上がっていった。
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足手荒神は戦国時代末、民衆一揆を指揮した地元・御船(みふね)城主の甲斐宗立(そうりゅう)を祭神とする。手足に重傷を負って敗走する宗立をかくまい看護した民家があった場所で、宗立が死の直前に「お礼にこの地で手足の守り神になろう」と言い残したと伝わる。いつしか人々が拝み始め、ほこらができ、神社になったといい、例大祭には毎年、数千人が願いを捧げに訪れる。
昨年4月の地震後も、倒壊した拝殿に「足のしびれが治りますように」などとお参りに来る人が絶えなかった。荒尾征吾宮司(45)は「危険なままお参りさせられない」と、6月に県神社庁を通じて兵庫・淡路島の神社から高さ約1・3メートルの拝殿の寄進を受けた。
地震で自宅が全壊したという神社近くの女性(90)はこの日、杖をつき、応急仮設住宅団地から30分以上かけて歩いてきた。「毎年の楽しみ。転んでけがした右手をよくしてもらわんと」と笑顔だった。荒尾宮司は「これからも心のよりどころでありたい」と話した。(平井良和)