札幌地裁に入るアンドレイ・ナバショーラフさん(中央)ら=23日午前9時25分、札幌市中央区、白井伸洋撮影
北海道小樽市で1997年、拳銃を所持していたとして銃刀法違反容疑で現行犯逮捕され、実刑判決を受けて服役したロシア人のアンドレイ・ナバショーラフさん(47)の再審公判が23日、札幌地裁(中桐圭一裁判長)で始まった。
おとり捜査で服役、ロシア人男性の再審開始へ 無罪訴え
罪状認否で、ナバショーラフさんは起訴内容について「その通りです」と述べたが、弁護側は、北海道警側がロシアから拳銃を持ち込むように仕向けた「違法な捜査」だったと批判し、無罪判決を求めた。一方、検察側は「有罪を求めるものではない」と述べ、有罪立証をしないと表明。無罪判決が言い渡される見通しになった。
ナバショーラフさんの起訴内容は、船員だった97年11月、小樽市の小樽港で拳銃1丁と実弾16発を所持していたというもの。98年に懲役2年の実刑判決を受けて服役した後、帰国した。
弁護団は2013年、捜査を担当した元道警警部の証言などを新証拠として「道警の捜査協力者のパキスタン人がナバショーラフさんに拳銃と中古車の交換を持ちかけた違法なおとり捜査だった」と再審を請求。札幌地裁が昨年3月、再審開始を認めた。検察の即時抗告に対し、札幌高裁は昨年10月、捜査報告書に捜査協力者の存在を隠すなどの虚偽記載があったことなどから、裁判の公正を疑わせると判断。再審開始が決まった。(坂東慎一郎)
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■ナバショーラフさんをめぐる経緯
1997年 銃刀法違反容疑で現行犯逮捕
98年 札幌地裁で懲役2年の実刑判決を受け、確定
2002年 捜査に関わった北海道警の警部(当時)が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、違法捜査の疑いが浮上
05年 国や北海道を相手に損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こす
10年 札幌地裁が虚偽の捜査書類作成などを認め、道に慰謝料の支払いを命じる。おとり捜査は認めるが「違法とは断定できない」と判断
13年 札幌地裁に再審請求
16年 札幌地裁が「違法なおとり捜査があった」と再審開始を認める。札幌地検が即時抗告したが、札幌高裁が棄却、再審開始が決定