後半、川崎・小林(中央)は右CKに頭で合わせ先制ゴールを決める=関田航撮影
(25日、川崎2―0大宮)
「ボールよ、来い!」
川崎の小林は念じていた。0―0の後半21分のCK。右からのクロスボールに、頭を合わせて先制。4年連続の開幕戦ゴールで勝利を引き寄せた。J1MVPの中村から今季、主将の座を譲り受けたばかり。その責任感を力に変えた。
拓大から川崎に入り、8年目を迎えた29歳の生え抜きだ。的確な位置取りと高い技術を武器に昨季はJ1の日本選手トップタイの15得点を挙げ、日本代表にも定着。シーズン終盤には、複数のJ1クラブから年俸1億円を超える移籍話をもちかけられた。
「こんな条件は二度と無い。人生で一番悩んだ」。踏みとどまらせたのは、昨季のチャンピオンシップ準決勝で敗れ、またもJ1のタイトルを逃したチームへの思い。「川崎で、優勝したい」。敗退当日のうちに誘いを断った。
チームに攻撃的なパスサッカーを浸透させた風間監督、3年連続でJ1得点王になったFW大久保はもういない。この日の試合、昨季までの華麗なパスワークは影を潜めた。それでも、選手それぞれが体を張って相手の攻撃をしのぎきった。小林は笑顔で誇った。「泥臭く勝つ、新しいサッカースタイルが加わった」(清水寿之)
○鬼木監督(川) コーチから昇格した新指揮官にとっての初勝利。「小林のゴールへの意欲がチームを引っ張ってくれた」
○中村(川) 「アウェーでの開幕戦で勝ち点3を挙げられたことは、新チームにとって大きい。苦しい試合をものにするしたたかさを身につけることが大事」