ジェーン・スーさん=東京都港区南麻布5丁目、西畑志朗撮影
3月8日は国際女性デー。作詞家でコラムニストのジェーン・スーさんは「女性同士でも意見は違って当たり前。個たれ!」と呼びかけます。
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国際女性デー特集「Dear Girls」
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「女は一枚岩で、意見が一致するはずだ」なんて、幻想。女同士なのに分かりあえないなんて、当たり前です。
「娘」が「女」になり、「妻」「母」となっていくように、女性は出世魚のように呼称が変わっていく。男性も「息子」「父」と変わるけど、期待されるものは非対称だと思う。だから、意見は違って当然で、個々がそれぞれのやり方でそれぞれの方向でがんばっていけば良い。「個」たれ!と言いたいですね。
私は、幼い頃は髪が短くて体も大きくて、「ピンク色が似合う、小さくてかわいらしい女の子」との乖離(かいり)を無自覚に感じていたと思います。
家族は「女の子なんだから」と言うことはなく、高校・大学は女子校で悠々自適に過ごしました。でも、「話がおもしろい」とは言われても、「モテ」からは離れていく。社会に出ると、女性の先輩が男性と同じように出世していくことはなく、結婚しないとまずいんだろうな、とも感じる。ずっと「もやもや」を感じていました。
ただ、当時は「社会が『女性』の型を決めて期待してくるから生きづらさを感じている」とは気づいていなくて、「かわいくて守ってあげたい」要素を持っていない自分が悪いんだろうな、と思っていました。
一方、男性は「働いて家族を養う」という固定化された役割を期待されていて、支えてくれるパートナーを求める構造がある。その構造をお互いに理解しないと、一方だけが解消されるのは無理だな、と思うようになりました。
社会が悪いんだ、と言っても、その社会に育てられている私の中に偏見は内在している。だから今は、「社会が押しつけてくる女性らしさにおもねってしまう自分」を半笑いで見られるようになった。そういう社会で育っているので、当然なんだと。
昔は「ピンクのような異性におもねるような色や態度はダメ」と思っていた。でも、自分が恋愛対象としている人に「かわいいと思ってもらいたい」と感じること自体は当然だし、臨機応変にすればいい。かわいい格好をしてちゃいけないわけではなく、なんでも反論しなきゃいけないわけでもない。譲れないところを決めておく、ということではないでしょうか。
最近、「女性活用」が言われ、管理職に勧誘される女性が増えています。でも、管理職の男性たちはヘトヘトに疲れていて、家庭にサポートする人がいる状態で成り立っている。それを見て「私にはできません」と断ると、「これだから女は」と言われてしまいます。「このシステムを変えてみませんか」と提案すれば、変わるかもしれない。
「彩りを添える」ために女性が登用されることは今後もあると思います。そこでいちいち怒っていないで、ぐっと肩を入れて場所を広げていくのも大事。
「正当に私を採って」というのはイデオロギーとしては正しいけど、実際に変えていくためには陣地を取らなければ。先に向こう側に入ってから、踊り場にいる女性たちを引き上げることもできると思います。
私は母を24歳の時に亡くしたので、「結婚しなさい」というようなことは言われなかったんですね。「仕事を辞めないように」というのが遺言のようなものだった。たぶん、私は働き続けることで「個」が確立していったんだと思います。
でも、それは私の場合。私は家事は効率よくできないし、働いていることのほうが得意なんです。そのようになれないからと言って、傷つけられたような気持ちになる必要はない。誰かと仲間になれないことをやみくもに悲観しないことが、「個」の輪郭をなぞる方法のひとつなのかもしれない。
いまも、「もやもや」から解き放たれたわけではないけれど、感じた時には、はっきり言うようになりました。それは、年齢や経験、立場が変わったから。この文章を読んで「私もこんな方法がとれるかも」と励まされる人がいたらうれしいけど、「これでは無理」と思ったとしても悲観的になる必要はない。
とにかく「個」だと思います。(聞き手・山本奈朱香)
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1973年、東京生まれの日本人。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。「未婚のプロ」として出した初の著書「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」が話題に。他にも「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」、「女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。」などの著書がある。
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