障害者施設内での虐待を告発したことで施設側から非難されるなどして精神的苦痛を受けたとして、元職員の女性が28日、施設を運営していたNPO法人に慰謝料など約569万円の支払いを求める訴訟をさいたま地裁に起こした。
女性は、さいたま市南区の障害者就労支援施設「キャップの貯金箱」(昨年12月に閉鎖)に勤務。市によると2015年、施設の男性職員が、知的障害者の裸の写真を撮影し、職場のパソコンで誰でも見られる状態にするなどした。市は障害者総合支援法に基づく監査をして虐待と認定、改善を勧告した。
訴状によると、女性は同年3月に虐待を市に通報し、報道機関の取材にも応えた。施設側は、ウェブサイトで「外部に発信すること自体が本当の虐待」などと女性を非難し、同年10月には女性に約671万円の損害賠償を求めたという。女性は告発後に退職し、うつ病と診断された、としている。
障害者虐待防止法は虐待発見時の通報義務や、通報によって職員が不利益な取り扱いを受けないことを定めている。女性は「告発はいけないことだったのか」と話している。運営していたNPOは「担当者が不在で取材に応じられない」としている。(小笠原一樹)