北朝鮮国籍の男性が勾留されていたクアラルンプール近郊の警察署には、早朝から多くの報道陣が集まった=3日午前、平賀拓哉撮影
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏が殺害された事件で、マレーシアの司法当局は3日午前、逮捕・勾留中の北朝鮮国籍の男性(46)を不起訴処分にして釈放し、強制送還するための手続きに入った。早ければ同日中にこの男性を北朝鮮に強制送還する方針だ。
特集:金正男氏殺害
マレーシア警察のカリド長官が3日、朝日新聞の取材に男性を釈放したことを認めた。男性は同日午前8時50分ごろ(日本時間午前9時50分ごろ)、勾留先の警察署を出発し、入国管理当局の施設に移された。男性が所持する労働許可証の期限が切れて不法滞在の状態になっているためだ。
男性は正男氏殺害に関与した疑いで2月17日に逮捕された。しかし、3日の勾留期限までに起訴するだけの証拠がそろわず、司法当局が2日、不起訴処分にする方針を明らかにした。
正男氏は2月13日、クアラルンプール国際空港で実行犯とみられる女2人に猛毒「VX」を塗りつけられて殺害された。北朝鮮国籍の男4人が指示役とみられ、事件当日に男らが使った車の名義から男性の名前が浮上。警察が犯行に関与した疑いで逮捕していた。
ところが、地元報道によると、男性は警察の調べに「車は以前に紛失したもの。実行犯のことも知らない」などと供述。空港の監視カメラにも男性は映っておらず、警察は男性と事件とを結びつける証拠を集めることができなかった。(クアラルンプール=乗京真知、平賀拓哉)