又吉直樹さん
お笑い芸人で作家の又吉直樹さん(36)の芥川賞受賞後第1作となる新作小説「劇場」を掲載した文芸誌「新潮」4月号(新潮社)が7日、発売された。400字詰め原稿用紙300枚の長編。文芸誌としては異例の4万部が発行された。
又吉さんは、2015年に初の本格的な小説「火花」を発表し、同年の芥川賞を受賞。ドラマ化もされ、280万部を超すベストセラーとなっている。
「劇場」は、東京・下北沢が舞台。大阪から上京し、無名の劇団を主宰する主人公は、若者特有の潔癖さで己の信じる芸術表現を模索するが、内向的でひとりよがりな性格が災いして劇団の仲間に見限られてしまう。貧しい主人公は彼女の家に転がり込むように同棲(どうせい)。うだつのあがらない日常や彼女に寄生するふがいなさなど、若者の悲喜こもごもを活写した青春恋愛小説だ。
新潮社によると、本作は「火花」よりも先に執筆を開始していたが、一時中断。1年前から執筆を再開していたという。又吉さんは「自分にとって書かずにはいられない重要な主題でした」「書きはじめてから完成まで2年以上かかりました。変な話ですが、この小説自体が書いてる僕を鼓舞してくれた瞬間が何度かあって、『ありがとう』とか『ごめんな』とか小声で言いながら書いていました」とコメントしている。(板垣麻衣子)