自民党は25日、政府が年末に策定する新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画(中期防)への提言をまとめた。対GDP(国内総生産)比で、ほぼ1%弱で推移してきた防衛費の枠撤廃を求めたほか、敵基地攻撃能力の整備や海上自衛隊の護衛艦「いずも」を念頭に事実上の空母化の検討を盛り込んだ。専守防衛からの方針転換につながりかねない内容だ。
提言では、北朝鮮や中国を念頭に「安全保障環境が戦後最大の危機的情勢を迎える」と位置づけた。5年前に策定した現在の大綱が掲げる「統合機動防衛力」に代わる新たな概念として、「多次元横断(クロスドメイン)防衛構想」を提唱。陸海空に加え、宇宙、サイバー分野も活用した防衛力の強化を訴えた。
防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)が対GDP比2%を目標としていることに言及。安倍晋三首相が昨年3月に国会で「GDPの1%以内に防衛費を抑えるという考え方はない」とした答弁を後押しする形で、「1%枠」の撤廃を求めた。
また、海自護衛艦いずもの空母化を念頭に、「多用途運用母艦」の導入を提唱。垂直着艦ができる戦闘機「F35B」の取得を促した。敵のミサイル基地をたたく敵基地攻撃能力についても、「憲法上も国際法上も認められない先制攻撃と一線を画した概念」として、「巡航ミサイルをはじめ『敵基地反撃能力』の保有について検討を促進する」とした。提言は、来週にも党内で正式に機関決定し、首相に提出する。(藤原慎一)