会話が聞き取りにくいヘッドホンと、緑内障の見え方をする眼鏡で、高齢者の「身体」を体験する参加者たち=25日、東京都渋谷区、葛谷晋吾撮影
高齢者との対話を通じ、「歳を重ねること」を考えるプログラム「ダイアログ・ウィズ・タイム―知恵ある人々との対話」が25日、東京都渋谷区で開かれた。70歳以上の高齢者と会話することで、参加者の年齢を重ねることへの不安を取り除いていく。イスラエルで2012年に始まり、日本での開催は初めて。約60人の参加者は公募で集まった5人の高齢者の「知恵」を学んだ。
「高齢になることを恐れてる?」、「65歳以上になった時のプランはある?」などと壁に書かれた部屋を抜けると、黄色い照明の部屋が現れる。高齢になるにつれて発症率が高くなる白内障の見え方を再現した部屋だという。
参加者は脚や手におもりを付け、会話が聞き取りにくくなるヘッドホンで高齢者の身体を疑似体験する。案内役の豊住勝春さん(77)が語る「年を取ると体が動きにくく、耳も遠くなるんですよ」との言葉に共感する。
高齢者の「苦労」を知ったところで、次の部屋に移動。案内人から、幼い頃の話や現在の活動、これまでの人生から学び取った教訓などを聞き、理想の老後をともに話し合う。
「気乗りしないことでもとりあえずやってみる」と、豊住さんはこれまでの人生から学んだ教訓を披露。「おかげで今でも世界が広がっている」と話した。70歳を過ぎてからSNSを始め、色んな人とつながっているという。毎日続けることで、60代の頃より体調が良くなっているという「転ばない体操」も参加者に伝授した。
参加した一木典子さん(45)は「高齢者になっても挑戦することで、いつまでも成長できるというのがリアリティーを持って伝わってきた」と話した。(葛谷晋吾)