イベントに登壇した安倍昭恵氏=3月7日、東京都文京区
学校法人「森友学園」への関与で注目される首相夫人の安倍昭恵氏。論壇ではこの間、「家庭内野党」と称されてきた昭恵氏の思想に新たな角度から光が当てられている。焦点は、スピリチュアルへの傾斜と国粋的な傾向とが共存している点だ。
「主人と意見が違うように見えても、目指すところは一緒で、日本を取り戻したいんです」。文芸春秋3月号の記事「安倍昭恵『家庭内野党』の真実」は、昭恵氏のこんな発言を伝えた。ノンフィクション作家の石井妙子氏が、昭恵氏へのインタビューも踏まえて執筆した。
脱原発に共鳴し、巨大防潮堤の建設に疑問を呈し、有機農法に取り組む。左派的な言動で、右派的な夫との〈違い〉が注目されてきた昭恵氏。だが石井氏は今回、「ふたりは価値観の基礎の部分を共有」し、「枝葉末節に属する活動については何もいわない、という安定した関係性」を築いている、と記した。
共有点の一つは、「日本の伝統」を称賛し、それが敗戦を機に米国によって奪われたと考える傾向だ。例えば昭恵氏は、日本古来の伝統だった大麻栽培が戦後は米国によって禁止されてしまった、との考えを示している。
もう一点として「信仰」も挙げた。水は人間の思いを受け取ると主張した「水の波動」理論で知られるスピリチュアル界の著名人・江本勝氏(2014年死去)。昭恵氏がその主張や神道に共鳴している点を紹介しながら石井氏は、首相夫妻が「信仰」的なものも媒介にして深く結びついている可能性を示唆した。
昭恵氏は、江本氏が主導した「国際波動友の会」の会員誌(11年)で「江本先生のおっしゃる水・意識・波動の話は正しいと直感しています」と述べていた。また江本氏とのつながりについて「20年くらい前、主人の父(注・晋太郎元外相)が……波動を調べてもらい、転写水を作っていただいたこと」がきっかけだったと紹介している。
昭恵氏は昨秋、社会学者の西田亮介・東京工業大准教授によるニュースサイトでのインタビューに応じ、宗教を問われて「どちらかというと神道です」。首相については「主人自身も特別な宗教があるわけじゃないんですけど、毎晩声を上げて、祈る言葉を唱えているような人なんです」と紹介した。「(私は)日本の精神性が世界をリードしていかないと『地球が終わる』って、本当に信じているんです」と語り、西田さんから「地球が終わるんですか?」と聞かれる場面も。
「昭恵氏の話は非科学的で非論理的な印象だった」「戦前の強かった日本が好きだという心情と、スピリチュアル、エコロジー。それらが混然一体になっている感じでした」と西田さんは証言する。
スピリチュアルやエコロジーへ…