対談を終えた谷川俊太郎さんと黒木瞳さん=東京都杉並区、飯塚悟撮影 詩人の谷川俊太郎さんと、小学生の頃から詩を書き、3冊の詩集を出している女優の黒木瞳さんが、東京都内の谷川さん宅で対談した。谷川さんに私淑してきた黒木さんが、谷川さんと対談するのは今回で3回目。黒木さんが詩のモチーフにしてきた「恋愛」、谷川さんのデビュー作以来の主題「宇宙的存在」など、幅広い話題で盛り上がった。 ――恋をモチーフにした詩を黒木さんはたくさん書いてきました。 谷川 恋は何回くらいしているの? 黒木 片手よりは多くないです。 谷川 始まりはどんな感じ? 好きな相手のそばにいるとぼーっとなる? 黒木 ぼーっとはしない。シャキッとなります。自分の感性の全体、すべての皮膚が呼吸しているみたいな感じ。私は谷川さんの『二十億光年の孤独』にすごく影響を受けているので、ちっぽけな自分の命は宇宙の中にあって、その中で人を好きになっているという感覚があります。 谷川 たしかに人を好きになるのは宇宙的。ただ人間関係をどう作っていくかという意味では社会的な営みだから、そこが難しい。僕の場合、詩も発注を受けて書いてきたけど、恋愛も「発注」されて、してきた感じで、自分から「好きで好きで仕方ない」というふうになった記憶がない。 黒木 それはおモテになったからでは。 谷川 このごろは「死ぬ」ということも「発注」されていて、それに応えて一生懸命死なないといけないという感じを持っている。 黒木 ここに生まれてきたことも誰かに発注されているという感覚ですね。 ――エロスについては? 谷川 人生のすべてですよ。エロスしかない、大事なものといえば。ビートルズだってそう歌っている。 いろんなエロスがある。幼い頃、父親が中国の硯(すずり)をなでているのを見たことがある。それがすごくエロチックだった。 黒木 想像するだけで、すごくエロチック。 谷川 僕は小学生の頃は男の子… |
黒木瞳さん「私は、谷川俊太郎先生に一方通行のエロス」
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