車両の先頭部分には長崎でよく見られる尾曲がり猫があしらわれた
長崎電気軌道の路面電車「みなと」の出発式が10日、長崎市大橋町の同社浦上車庫であった。午後からは営業運転が始まり、豪華列車「ななつ星」や九州新幹線などを手がける水戸岡鋭治氏デザインの路面電車が長崎の街を走り始めた。
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「みなと」は1954年製の車両をリニューアル。多様な文化が入り交じる港町・長崎をイメージした意匠がちりばめられている。デザインを担当した水戸岡さんは出発式でのあいさつで「ブリキのおもちゃのようなかわいい電車に仕上がった。60年前の車両を手間をかけて改修し、懐かしくて新しいものができあがった」と語った。デザインには和洋中の要素を取り入れた。「世界中のデザインを詰め込んだ、インターナショナルな車両になった」と水戸岡さんは話す。
みなとの外観は港町をイメージしたメタリックブルーを基調にゴールドの差し色で塗装。内装には木材を多く使ってぬくもりのあるデザインに仕上げた。床はフローリングで、つり革も木製。ドア付近の窓には教会で使われるステンドグラスを取り入れた。室内灯には船舶用のものを使用し、柔らかい光が車内を照らす。車両の先頭部分には、長崎に多く生息する尾曲がり猫をあしらった。
あいにくの雨の出発式となり、長崎の印象を問われた水戸岡さんは「長崎は雨だった」とぽつり。「長崎は素晴らしい観光地。気候、自然、文化、食事とあらゆるものを全部持っている。新幹線が開通するが、経済性や利便性を追求するだけではなく、(みなとのような)手間ひまかけた心のデザイン、情緒のある街のデザインをしていってほしい」と話した。
水戸岡さんへのデザインの依頼は、路面電車の魅力向上につなげようと長崎市が同社に提案。改修費用は2千万円で、半額を市が補助した。通常の車両と同様に運行され、料金も通常と同じ大人120円。運行情報は同社の運行情報サービス「ドコネ」(
http://www.naga-den.com/publics/index/25/
)でパソコンやスマホから確認できる。8640円から貸し切りもできる。(山野健太郎)