(13日、阪神4―1DeNA)
同点の九回無死一塁、打席には阪神の梅野。次打者の藤浪は、ベンチでバットを手にし、ヘルメットをかぶり、打席に備えていた。8回を投げ終え、97球。金本監督は「梅野がバントを失敗したら、(藤浪に走者を)送らせて、九回もあった」。梅野のバントは内野安打となり、無死一、二塁。必ず得点しなければならない状況が生まれ、藤浪は代打を送られた。
完投を逃したのは、打順の巡り合わせのためだ――。そう感じさせるほど、投球は完璧だった。ストライクゾーンでの勝負に徹し、24アウトのうち、ゴロで奪ったものが14。四球は一つだけで「5回9四死球」と大乱調だった前回、4日の初登板から、完全に修正してみせた。
運も味方につけた、今季初勝利でもある。
本来は11日に先発する予定だった。だが、雨で中止に。WBC日本代表からチームに戻り、日本の統一球の感覚を取り戻すには、十分すぎる時間を得た。先発ローテーションでは通常、次回登板までにブルペンで調整するのは1度だけ。中8日となった今回は、3度も投球することができた。
先発投手は一つ勝ち星を挙げるまで、“開幕”ではないと言われる。藤浪は「深く考えすぎずに、シンプルに投げたい」と臨んだ2戦目で、本来の姿を取り戻し「自分の中でスタートが切れた」。12日に23歳になったばかり。1勝目は、自分への誕生日プレゼントにもなった。(井上翔太)