韓国大統領選の公式選挙運動の解禁を受け、通勤客に支持を呼びかける「国民の党」の安哲秀氏=17日、ソウル・光化門周辺、武田肇撮影
韓国で17日午前0時、朴槿恵(パククネ)前大統領の罷免(ひめん)に伴う大統領選の公式選挙運動が始まった。支持率トップの最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)前代表(64)は朴氏の出身地、大邱で第一声。わずかな差で追う野党第2党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)・元常任共同代表(55)は、3年前の沈没事故で朴政権失政の象徴になったセウォル号の出港地、仁川をまず訪れた。
選挙は北朝鮮政策や若者の就職難対策などが争点で、5月9日に投票、即日開票される。14日に公表された韓国ギャラップの世論調査結果では、文在寅氏の支持率が40%、安哲秀氏が37%。大統領選には朴政権で与党だった自由韓国党(旧セヌリ党)の洪準杓(ホンジュンピョ)・前慶尚南道知事(62)、セヌリ党を離党した議員らで結成した「正しい政党」の劉承旼(ユスンミン)議員(59)らも立候補している。
文在寅氏が17日朝、大邱の最初の訪問先に到着すると、選挙の運動員らから「文在寅コール」がわき上がり、支持者らにもみくちゃにされた。大邱では「雇用100日プラン」を発表し、「雇用大統領になる」と訴えた。
韓国統計庁によると、3月の失業率は4・2%だが、若年層(15~29歳)に限ると、11・3%。大学生らの就職難対策が主要争点の一つだ。
文在寅氏が訪れた大邱と慶尚北道(キョンサンプクト)は伝統的に保守層が厚く、自由韓国党の地盤でもある。過去の大統領選では保守系が強い地域と進歩(革新)系の地域が対立してきた経緯もある。「共に民主党」の首席報道官は最初の遊説先に大邱を選んだ理由を「全国的に支持される初の統合大統領になるという強力な意志を反映した」と説明した。
安哲秀氏は選挙運動解禁直後の17日午前0時過ぎ、仁川港の海上交通管制センターを訪問した。2014年4月15日に仁川港を出発したセウォル号は翌16日に沈没。304人が死亡・行方不明になり、朴政権の失政の象徴になった。
安氏はセンターの職員らに「国民の生命と安全を守る韓国を作ることを誓う」と述べ、災害や事故への対策を充実させると訴えた。
安氏はその後、朴政権退陣の集会が繰り返し開かれたソウル中心部の光化門広場に移動し、「(全国民によって)国家権力を私有化した大統領は弾劾(だんがい)された。偉大な国民の息吹が満ちたここから選挙運動を始める」と演説した。(大邱=東岡徹、ソウル=武田肇)