衆院法務委で、共産党の藤野保史氏の質問に答弁する金田勝年法相。左は安倍晋三首相=19日午前9時53分、岩下毅撮影
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案の実質審議が始まった19日の衆院法務委員会で、金田勝年法相の答弁に注目が集まっている。これまでは成案が出ていないと言って答弁を先送りしてきたのに、この日は身ぶり手ぶりで質問に応じる姿勢を強調したからだ。ところが、質問と関係ない持論についての長広舌ぶりに、さっそく野党は「自分の思いを答弁しているだけで時間の無駄だ」と批判した。
金田氏は「共謀罪」法案の審議入りに先立つ衆参の予算委員会で、「成案を得たら説明する」と繰り返し述べ、法案についての具体的な説明を避けてきた。民進党の主張では、金田氏が答弁を避けた質問は40項目に及ぶ。2日前の衆院決算行政監視委でも、「法務委員会で全部聞いてくれれば直ちに答える」と答えていた。
この日の衆院法務委では、共産党の藤野保史氏が「(共謀罪を立証するため)犯罪の目的を調べるのは(法案が)共謀を処罰しようとするものだからではないのか」と安倍晋三首相を指名して質問した。
ところが首相にとどまらず、法務省刑事局長と金田氏も答弁を重ねた。とりわけ金田氏は「(答えていない質問が)40項目あれば、いつでも聞いてください」と述べたうえで、自身の従来の答弁姿勢にまで言及。「基本的な考え方については、誠意をもってこれまで答弁に努めてきた」などと弁明を始めた。
これに対して、藤野氏は「全く質問内容に関係のない、自分の思いだけを答弁する。時間の無駄だ」とこき下ろした。他の野党議員の質疑の際も「質問に答えていない」などと金田氏にヤジが飛び、審議は荒れ模様だ。(石松恒)