男子フリーで演技をする羽生結弦=北村玲奈撮影
(21日、フィギュア世界国別対抗戦 男子フリー)
【特集】フィギュア世界国別対抗戦
SP7位に終わった前夜、羽生は悔しくて眠れなかった。失敗した4回転ループが頭から離れず、思い出す度に目が覚めた。
「3時、4時まで寝付けなくて、ずっとイメトレばっかしていた。こんなに悔しいなら、もう1回、4回転やっちゃえよって」
4回転ジャンプを5回跳ぶ――。これが、羽生が出した答えだった。今大会はSPとフリーの合計点では争わない。一発勝負だからこそ、思い切ってできた。
2月の四大陸選手権や3~4月の世界選手権のフリーでは4回転を4本跳んでいる。この日は初めて、体力が落ちる後半に3本入れる難しい構成に挑んだ。
4回転サルコー―3回転トーループ、4回転トーループ、4回転トーループからの3連続ジャンプを次々と着氷。前半のサルコーが1回転になり、4回転を全部で5本決めることはできなかったが、羽生は言う。
「体力が落ちている中できれいに連続ジャンプを跳べた。1点でも2点でも多く稼ぎたいって自分の気持ちが乗っている時に使える武器になる。自分のアベレージを上げるという意味で、自信にはつながる」
滑り終わる頃には息が上がり、最後のトリプルアクセルはシングルになった。合計点では宇野に及ばない。それでも、フリーでは唯一の200点超えだ。「みんなのために戦う試合。久しぶりに試合を楽しめた」。いよいよ、連覇がかかる五輪シーズンの来季へ。22歳は新たな可能性を見つけた。(野田枝里子)