8日、南シナ海を航行する米原子力空母カールビンソン(米海軍提供、ロイター)
トランプ米政権が、北朝鮮に対する圧力を一段上げた。朝鮮半島周辺に派遣する原子力空母カールビンソンと海上自衛隊の護衛艦が23日に共同訓練を始めた。ただ、北朝鮮に影響力を持つ中国は警戒感を募らせる。拳を振り上げ続けるトランプ政権と日本は、綱渡りで「力による平和」外交を推し進める。
「訓練の中身が問題なのではない。日米の艦艇が一緒に航行している様子を北朝鮮に見せつけることに意味がある」。日本政府関係者はそう打ち明ける。
今回の共同訓練は、「柔軟抑止選択肢」(FDO)と呼ばれる枠組みで実施される。2015年に改定された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)で盛り込まれた協力項目だ。
また、共同訓練の調整を行ったのは、防衛省・自衛隊と米太平洋軍司令部、在日米軍司令部などで構成される「同盟調整メカニズム」(ACM)という機関。これもガイドラインで新設された。平時から自衛隊と米軍の間で情報を共有し、調整するための協議体だ。
防衛省幹部は「北朝鮮の挑発によって状況は極めて緊迫しているが、完全な戦争状態でもない。いわゆる『グレーゾーン』の状況で、日米が緊密に連携するための枠組みが極めて有効に機能している」と話す。
一方、別の政府関係者は、今回の朝鮮半島周辺への空母の展開と共同訓練のもう一つの狙いを「東シナ海や南シナ海で軍の活動を活発化させている中国に対する牽制(けんせい)だ」と明かす。
トランプ政権が単独で軍事行動を起こす可能性は低い。日本政府は朝鮮半島情勢をにらみつつ、改定したガイドラインの実績を作るとともに、中国を日米で牽制する足場固めも狙っている。防衛省幹部は「日本海で共同訓練するかどうか、今後の状況次第」と話す。(土居貴輝)