18番を終え、喜ぶ吉田弓美子=時事
(23日、女子ゴルフ フジサンケイレディスクラシック
「勝つ人って、ああいうゴルフをするんだな」と、同組で回った堀琴音を驚かせた。高低差約7メートルのグリーン面へ打ち上げる17番パー3(172ヤード)。首位を走っていた吉田弓美子の1打目は横風にあおられてグリーンに乗らず、斜面のふもとに転がった。このピンチで、吉田は逆に勝利を決定づけた。
「グリーンに届かずに、手前に戻って来るのが一番だめ」。強めに打ち、確実にグリーンに乗せた。ピンまで約15メートル。この時点で2位とは3打差あった。「2パットのボギーでいい」と気負わず打ったパーパットは、右に曲がるラインを計算した完璧なタッチでカップへ。右手を突き上げた。
ショットの名手として4年前に年間3勝を挙げ、賞金女王も近いと目された。が、その先に続いていたのはいばら道だった。「考え過ぎてダメになった」。昨年4月ごろからはクラブを持つ手が震え、ゴルフ場に行こうとすると苦しくなった。眠れなくなり、8月の試合中に倒れて救急搬送された。通院し、カウンセリングを受けてきた。
前週までの今季6試合は、4試合で予選落ちし、1試合は背中痛で棄権した。今週も背中痛が発症し、プレー中に何度も顔をゆがませた。それでも、やっとたぐり寄せたチャンス。棄権を勧めるキャディーに「やらせて」と頼んだ。
今週で、30歳になる。「これからもゴルフと一緒に人生を歩みたい。今、そう思えることが何より幸せ」。やっとゴルフで笑えた喜びに、涙があふれた。(渡辺芳枝)