奥山佳恵さんと次男の美良生君=西田裕樹撮影
女優でタレントの奥山佳恵さんは、ダウン症の次男美良生(みらい)君(5)の入学を来春に控える。目下の悩みはやはり、どの進路を選ぶかだ。奥山さんに話を聞いた。
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美良生(みらい)を育てながら、理想と現実を感じています。「障害者と健常者、共に生きていこう」「だれもが過ごしやすい世の中に」と語られる一方、現実は6歳で分けられる。小学校の通常の学級、特別支援学級、特別支援学校のどれかに選別されるところから教育って始まる。「まぜこぜ」の社会をめざすのに、なぜ初めからまぜこぜじゃないんだろう。すごく不思議です。
みんな得意、不得意があって凸凹なのが社会でしょう。じっとしていられない子、勉強ができる子、いろいろいて、支援が必要な子の数だけ先生が増える。子どもも、それぞれが自分にできることを考え、フォローするところはフォローしてクラスができあがっていく。それが私の理想です。
障害児を分ける必要なんてない、どんな子も同じ教室で受け入れたい、という校長先生お二人に縁あって出会いました。ただ、現状はその先生方が講演会を開いているくらい、分け隔てのない教育の間口はまだせまい。始まったばかりなんだなと感じます。
この子と同い年で障害のない友だちがいます。5歳どうしだと障害の有無を意識せずに遊べるんですね。一緒にいるところを見ていたら、その子は美良生のできることを見つけて、2人で楽しそうに遊んでいました。何かができないから付き合えないではなく、できることを探して遊ぶ。まさに、理想の社会がここにあると思いました。
障害のない子たちとも一緒に育ち、成人式で「久しぶり」と再会を喜び合えるような友人に恵まれたらいいなあ、と思います。
小学校の通常の学級に入れるかは、校長先生の考え方次第らしいとも聞きます。少しでも通常の学級の子と交われたらいいと思うけれど、もし、美良生が生きづらくなったら元も子もない。本人が楽しく通えて、笑顔になってくれる道が一番いい。でも、そこの判断がとても難しいですね。
特別支援学校や特別支援学級はサポートが手厚いのがメリット。皆さんの力を借りてこそ、大きく育つ部分があると思うので安心できる。将来、どんなことができるようになるかなど相談にのっていただけるのもありがたい。必要な情報も得やすいでしょうね。
昨年6月ごろ、小学校の支援学級を見学しました。1年生が図工でスタンプを自由に押す授業の間、隣の通常の学級からは「あいうえお」を勉強する声が聞こえました。こんなに違うんだと驚きました。
その日は雨で、歩いて家まで帰りました。途中、アジサイの花がすごくきれいに咲いているのを見つけて、ふと思ったんです。支援学級はお散歩コース、通常の学級は超特急の新幹線かなって。新幹線に乗っていたら気づかないアジサイも、ゆっくり歩いていれば立ち止まって楽しむことができる。お散歩コースはゆっくりだからこそ学べることもある。そこに優劣はないんだって。支援学級に抵抗があるわけではありません。大事なのは、子どもが窮屈さを感じないことだと思います。
美良生も18歳になったら、家を出て自立してもらいたいと思っています。支援は必要かもしれないけれど、人生を自分で切りひらいて楽しんでほしい。社会で生きていく力につながるような学校生活を、と願っています。
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〈おくやま・よしえ〉 1974年、東京都生まれ。著書に次男の育児をつづった「生きてるだけで100点満点!」(ワニブックス)などがある。