三菱重工業長崎造船所で出港の準備を進める大型客船「アイーダ・ペルラ」=3日、長崎市
三菱重工業が長崎造船所(長崎市)で建造してきた大型客船「アイーダ・ペルラ」が3日、欧州に向け出港した。大型客船事業は巨額損失を理由に昨秋、撤退を決めており、この船が最後の大型客船になった。
三菱重工、大型客船から撤退へ LNG船に注力
独アイーダ・クルーズ社から約1千億円で2隻受注したのが2011年。大型客船11年ぶりの受注だったため、建造ノウハウが足りず、無線LANの整備や欧米人好みの装飾などの点でつくり直しも相次いだ。納期が約1年遅れた結果、計2540億円の特別損失を計上。宮永俊一社長は昨年10月、10万トンを超える大型客船の建造から撤退すると表明した。
アイーダ・ペルラは全長約300メートル。1643の客室があり、乗客・乗員最大5千人を乗せることができる。出港前にあった内覧会で、三菱重工の担当者は「最後の大型客船で悲しいという思いもあるが、この経験を中小型の客船に生かしていきたい」と話した。
三菱重工の造船事業は、中韓勢の台頭で液化天然ガス船などでも採算の確保に苦しむ。今年3月には専業メーカーの今治造船(愛媛県今治市)、名村造船所(大阪市)と、建造部門などの提携で基本合意するなど、構造改革を進めている。