「共に民主党」の文在寅候補の演説で、候補者番号「キホ1」を表す指サインで賛意を示す支持者ら=6日、韓国・仁川市、武田肇撮影
9日投開票の韓国大統領選も、いよいよ最終局面。候補者が火花を散らす街頭演説で、支持者や聴衆らは賛意を表すのに「指サイン」をつくっている。「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)候補は親指1本、「自由韓国党」洪準杓(ホンジュンピョ)候補は人さし指と中指のピースサイン、「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)候補は人さし指と中指、薬指の3本、といった具合だ。
特集:韓国大統領選挙
これは韓国語で「キホ(記号)」と呼ぶ候補者番号を表すしぐさ。韓国の選挙の投票は、投票用紙に候補者番号と候補の政党名、名前の三つが記され、選んだ候補にハンコを押す仕組み。有権者に候補者の番号を浸透させ、票を増やそうという狙いがある。
中央選挙管理委員会によると、「キホ」は、候補者の所属政党の国会議席数の順で決まる。文候補が「キホ1番」なのは「共に民主党」の国会(定数300)の議席数がトップの119議席だから。ちなみに、保守系「正しい政党」の劉承旼(ユスンミン)候補は「キホ4番」、日本ではあまり報道されない議席数6の少数野党「正義党」の沈相奵(シムサンジョン)候補は「キホ5番」。所属政党はあっても国会に議席がなかったり、無所属だったりする場合は、後ろに回る。
韓国の選挙で「キホ」は単なる数字以上に浸透している。韓国社会でも、初対面の人に支持候補を聞くのは礼儀に反するが、「何番を支持していますか」と尋ねると、答えてもらえることがある。候補者も「『1番』と『2番』のどちらを選んでも国民は分裂するだけだ」(安候補の演説)といったふうに、他候補の名指しを避けつつ批判するために「キホ」を活用している。
「キホ」をめぐっては、かつては有名人が投票所で撮った写真をフェイスブックなどのSNSに投稿する「認証ショット」が物議を醸すことがあった。意図せずしたピースサインが「『2番』への投票を呼びかけた」とみなされ、公職選挙法違反の疑いがかけられたためで、投稿削除や謝罪騒動が起きた。しかし、今回の選挙からは問題ないとされ、トラブルはなくなった。事前投票があった4日、5日には、投票を終えた多くの有権者が、特定候補を表す指サインと一緒に撮った写真をSNSに投稿した。(ソウル=武田肇)