安倍首相の憲法改正発言に対する自民党議員の主な受け止め
安倍晋三首相の憲法改正発言を受け、自民党執行部が党内議論を加速させることを確認した。自民、公明、維新など「改憲勢力」だけで進める強気の声も上がる一方、自民改憲草案との整合性を問う指摘や発信の仕方をめぐる苦言もあり、意見集約には一定の時間がかかりそうだ。
■「3分の2で」強気の声
安倍晋三首相は9日の参院予算委員会で、「自民党としての憲法審査会への提案を、いかに苦しくてもまとめ上げる決意だ」と述べた。委員会に先立ち開かれた党役員連絡会では、高村正彦副総裁が「党内議論をこれから充実させていかなければいけない」とあいさつ。安倍首相が改憲項目として掲げた9条に自衛隊を位置づける条文を追加することなどについて、党内で具体的な議論を加速させることを確認した。
前日の党役員会では、首相自らが「議論に一石を投じた」と説明。自民、公明、維新などの「改憲勢力」が衆参両院での3分の2を上回っているうちに発議まで進むとの意思表示と受け止める出席者もいた。ベテラン議員の間でも「3分の2の議席を国民から与えられている。しっかり議論しろというのは国民の意思だ」(森山裕・前農林水産相)といった声が出るなど、議論を急ぐべきだとする意見は多い。
党憲法改正推進本部や衆参の憲法審査会メンバーはこれまで、民進党など野党との協調路線を取ってきたが、現実には改憲項目の絞り込みに向けた議論は進んでいない。首相周辺は「本気で改正をやろうとしているのか」と漏らす。こうした協調路線への不満が首相発言につながったとの見方は根強く、首相に近いメンバーへの差し替え論も党内でささやかれている。
だが、衆院憲法審の中谷元・筆頭幹事は「国論を二分しないよう協議することが重要だ」と指摘する。11日の衆院憲法審は「地方自治」をテーマに議論することが決まっていたが、首相発言に対する野党の反発で開催も不透明になった。竹下亘・国会対策委員長は9日の記者会見で「首相が思ったような日程感で進むとは考えづらいというのが正直なところだ」と語った。