東洋経済オンライン編集長を経て転職したニューズピックス佐々木紀彦編集長。同社取締役でもある
新聞や雑誌が長期低落するなか、短期間に急成長した経済専門ニュースのニューズピックス。その成功の秘訣(ひけつ)を佐々木紀彦編集長に聞いた。
(インタビューは2017年4月25日)
ニューズピックス、課金モデルで黒字化 月額1500円
――経営概況をお聞かせください。
「有料会員は昨年の年末で3万2千人弱。2016年12月期決算で黒字化しました。無料会員もたくさんいるので、もうひとつ大事にしている指標が1日に1回以上見たというデイリー・アクティブ・ユーザーで、これがいま55万人です。こちらは無料会員が中心の数字になりますね」
――平均的な有料会員はどんなイメージですか?
「30歳代が圧倒的に多いですね。新聞を読まないような世代です。男女比では圧倒的に男性が多くて、女性は2割ぐらい。ビジネスパーソンが多いですね」
――展開している独自ニュースで有料会員を引っ張ってきているのでしょう?
「そうです。ヒットした独自の特集記事はDeNAの『歪(ゆが)みの遺伝子』。最近は『東芝崩壊』『日立進化論』も読まれました。以前はベンチャーやIT、スタートアップの記事が多かったですが、最近は大企業特集を増やしています。ヒットした記事では、何千人もの有料会員を引っ張ってきたものもありますね」
――スマホで見ていると操作性に優れていて、課金に誘導する動線が巧みですね。
「そうですね。でも、もう、あんまりテクニック論は言ってもしょうがないかな。オリジナルの独自記事が目立つようにスマホ上で置く場所を意識したり、有料記事の中でもこれは面白いと思えるものはプッシュ通知を送ったりしていますが、やはりそうしたテクニックよりも中身が大事ですね。新聞社の人は記事は短いものがいいと思いがちですが、私たちはたとえば1万字インタビューとかそういう長文の記事を増やしています。長い記事でも好調な課金実績があります。長い記事にあえて挑戦しているのです」
――もちろん中身が大事でしょうが、そうはいっても他のニュースアプリと比べてもデザインや操作性を工夫しているのではないですか?
「それはやって当たり前のことです。ニューズピックス全体で社員は50人いて、編集部員は20人。ここには記者、編集者、デザイナーがいます。それとエンジニアが20人、広告担当が10人といった具合です」
「私たちの記事は完全にデザイナーと記者のコラボレーションです。見せ方にとても気をつかいますね。先日はイラストで解説するという表現方法にも挑戦しました。いままで文字で表現したものを、イラストを使って、わかりやすく見せたりしています。こういうデザイナーと記者のコラボは毎日のようにやっていますね。デザイナーは4人いて、記者・編集者と常に議論です」
――課金に導く点で特に工夫し…