衆院憲法審査会の幹事懇談会に臨む与野党の幹事や委員ら。中央奥は森英介会長=11日午後、東京・永田町の衆院第1議員会館、岩下毅撮影
自民党は11日、衆院憲法審査会の幹事懇談会で、憲法改正を巡る一連の安倍晋三首相による発言は、「党に向けて示したものと理解している」としたうえで、「2020年施行」と年限を区切った発言に審査会が「縛られるものではない」と表明。与野党は18日に審査会を開催することで合意した。
改憲論議、急ぐ自民 「3分の2で」強気の声も
憲法改正「2020年に施行したい」 首相がメッセージ
自民は首相発言を審査会の議論と切り離すことで、審議の再開を優先させた。ただ、首相や党幹部と調整せずに野党との協議を先行させたことから、首相と現場の方針に矛盾が生じかねず、今後、党内や国会で問題となる可能性もある。
首相は3日付の読売新聞インタビューなどで、憲法9条に自衛隊の存在を明記する改憲案と20年施行に言及。衆参予算委員会で「読売新聞を熟読して」などと具体的な答弁を拒んだため、野党は「国会軽視」と強く反発、11日の衆院憲法審の開催が見送られた。
11日の懇談会で自民の中谷元・与党筆頭幹事は、「総裁としての発言は、党内議論を加速すべきだとの趣旨で、他党へ強制や命令できるものではない」と釈明。民進の武正公一・野党筆頭幹事はこの説明に納得せず、協議が続いた。
中谷氏は最終的に、首相発言は自民党内向け▽審査会の具体的スケジュールは各党各会派の協議で決定し、「20年施行」に縛られない▽審査会では今まで通り与野党の合意形成を進める、との3点を約束すると提案。18日に中谷氏がこれらを表明し、森英介・審査会長も「憲法改正の発議権を有しているのはあくまで国会。会長として公正・円満な運営に努める」と述べることを文書でまとめることで、野党は審査会の再開を受け入れた。
18日の審査会は「国と地方のあり方」で各党が意見を表明する予定。だが、与党はこの日に「共謀罪」法案の衆院通過をさせる方針で、国会が混乱すれば再び開催が見送られる可能性がある。(岡本智)