館内を案内する金成妍さん=大分県玖珠町
「日本のアンデルセン」と呼ばれた童話作家、久留島武彦(1874~1960)の記念館が、出身地の大分県玖珠町に開館した。館長は韓国・釜山出身の金成妍(キムソンヨン)さん(38)。留学先の日本で恩師に手渡された作品がきっかけで久留島の研究を始め、その縁で開館準備に奔走した。今は亡き恩師の言葉を胸に、作品の魅力を語り継ぐ。
金さんは2002年、九州大学大学院に留学し、日本の童話作家を研究した。指導教官は花田俊典教授(日本近代文学)。いつも笑顔で温厚だったが、研究に向き合う姿は厳しかった。04年5月下旬、「久留島武彦童話集」と「久留島武彦追悼集」を手渡された。知らない作家だった。理由も聞きそびれた。その数日後、花田さんは心筋梗塞(こうそく)で急逝。53歳だった。
金さんは当時、修士課程を終えたばかり。博士課程の研究テーマも決めていなかった。突き動かされるように久留島の出身地の玖珠町に行くと、久留島の記念碑があった。建立のため子どもたちが1円ずつ寄付したと地元の人に聞いた。
これほど慕われた久留島とはど…