三島由紀夫賞に決まった宮内悠介さん=16日午後7時3分、東京都港区、遠藤啓生撮影
第30回三島由紀夫賞・山本周五郎賞(新潮文芸振興会)の選考会が16日、東京都内のホテルで開かれ、三島賞は宮内悠介さん(38)の「カブールの園」(文芸春秋)、山本賞は佐藤多佳子さん(54)の「明るい夜に出かけて」(新潮社)に決まった。賞金は各100万円。贈呈式は6月23日にある。
宮内さんは東京都生まれ。4歳から米国で育ち、中学1年の時に帰国した。早稲田大第一文学部を卒業後、プログラマーなどの職に就いた。2012年、囲碁が題材の「盤上の夜」で日本SF大賞を受賞し、直木賞候補に。今年1月の芥川賞候補にもなった「カブールの園」は、日系3世の米国人女性プログラマーが主人公。小学生の頃にいじめられた記憶に苦しむが、旅に出て戦時中の日系人収容所や疎遠になった母を訪ねるうち、多民族国家アメリカでマイノリティーが生きる道を見いだしていく。宮内さんは「今回真に受賞したのは、もしかしたら彼ら日系人なのかもしれない」と語った。
佐藤さんは東京都生まれ。1989年に「サマータイム」で月刊MOE童話大賞を受け、児童文学でデビュー。陸上に懸ける高校生を描いた「一瞬の風になれ」で07年の本屋大賞などを受賞。「明るい夜に出かけて」はラジオ番組をきっかけに若者たちが新たな関係を築く青春小説だ。